復元・復興・模擬天守の区分
令和の現在、藩政時代からの現存天守といわれるものは12基しか残っておらず、昭和の高度経済成長期を時代背景にして全国各地にいわゆる「天守閣」と呼ばれているものが建造されました。おおむね昭和30年から50年代あたりでしょうか。
これらの新設された天守は戦後復興の市民の心の拠り所になり、郷土の誇りにもなり、地方自治体の観光資源にもなっています。昭和初期に建てられ今では近代建築の文化財まで出世した現・大阪城復興天守のようなものがあります。
一方で、お世辞にも美観的に???な興ざめ「天守閣」もあると思いませんか。
再建天守にランクをつけてみた
時代考証的に評価すると復元天守・復興天守・模擬天守が大きく分類されているようです。
そこで私なりに外見上の復元度に応じてランク付けしてみました(あくまで個人的な感想です、皆さま異論も多いと思います)
復元度Aランク(旧状が古写真、指図等で判明し、再現度・満足度が高いもの)
大洲城、白河城、白石城、会津若松城、和歌山城、改修後福山城・改修後、松前城、大垣城、あたりまで

復元度Bランク(旧状が古写真、文献等で判明するが細部を正確に表現できていないもの)
改修前福山城、福知山城、広島城、名古屋城、熊本城、岡山城、尼崎城、あたりまで

復元度Cランク(旧状が古写真、文献等で判明するが破風や高欄を余分につけて観光面で妥協したもの)
小田原城、岡崎城、高島城、岩国城

復元度Dランク(Cランクに準ずるがちょっとやりすぎ感ありなもの(-_-;))
大阪城、小倉城、島原城、
小倉城復興天守(南蛮造り天守と言われていた。城紹介本では破風はなかったが、地元の関係者の要望で採用したと書かれているのはおなじみのところです。これはこれで見ごたえはあるのですが、破風なしの復元天守も見てみたいと思う方もいそうですね。

復元度Eランク(旧天守台上に時代考証?して想像上の天守をあげたもの。これも昭和期では復興天守と言われていた)
浜松城、岐阜城、岸和田城

復元度Eランク(天守はあったとされるが外観資料がなく位置や規模すらわからないもの)
忍城、長浜城、大多喜城、中津城、今治城、伊賀上野城、清州城、中津城あたりまでか

夕景をバックに美しい長浜城模擬天守を載せています。築城時の建築様式や、あるいは羽柴秀吉築城時の姫路城小天守の華頭窓様式を意識したのかそれらしい造りにはなっています。望楼部と基部の入母屋建物とのバランスがいま一つ悪く美しくないように思えます。
最上階の入母屋屋根の向きを下部入母屋に直行させたら良かったと思いますが、それだと犬山城そっくりになりパクったと思われるので遠慮したのでしょうか。
Fランク(天守の存在が証明されておらず、もはや復元・復興とはいえません)
唐津城、富山城、千葉城、墨俣城、熱海城以下の歴史・郷土資料館
Fランなどとつけると、どこかの大学の序列表現みたいですが、ここでは

なかなか
どうせつくるなら・・・
天守は城の華であり、模擬建築と分かっていても全体が城址公園として保存・整備されていたらやはり見惚れてしまいます。佐賀県の唐津城天守は見た目が素晴らしいですよ。
私は再建天守には否定的ではありません。
天守再建はできる限り時代考証にもとづいた復元度の高いものであればコンクリ天守でも再建しないかなんて思ったりします。でもそうなると、文化財保護や建築の規制などいろんな問題が起こってきます。
私たちのような城マニアからいうと、城郭建築を新設するならば、できるだけ資料(発掘調査の成果や古文献・絵図)に依拠した木造建築を望むのですが、それはそれで自治体の財政的な問題も発生してきます。
木造復元建築の期待を込めて
古写真や建築資料で旧状が判明しており、一城郭ファンとしてあったらいいなと思う天守の復元建築を挙げてみましょう。
名古屋城、高松城、津山城、寛永期江戸城、米子城天守と四重櫓(旧天守)、福井城天守、鳥取城三階櫓あたりでしょうか
その他は、福岡城武具櫓、仙台城大手門あたりも観光的には話題になると思います。
また、近年は発掘調査に基づいて天守以外の城郭建築も復元されるようになり城観光も「天守閣」に依存しなくても満足してお帰りの方も多いと思います。
平成以降のものでは、御殿建築では名古屋城本丸御殿、熊本城本丸御殿(破損中)、佐賀城本丸御殿(観覧料無料!)、篠山城など
最近では鳥取城大手門、金沢城鼠多門、水戸城大手門と隅櫓などが本格的に復元し楽しめます。
自分の寿命を考えると、後どのくらい新築の復元建築を楽しめるのか、できるだけ行ってみたいなと子供のようにワクワクしています。